FM!

Tik Tokの広告で毎回舌打ち、ファントムです。

最近ツイッタの方に作ったビート載せてます。是非チェックしてください。かっこいいやつとダサいヤツが入り乱れてます


さて、前回アール・スウェットシャツについて書きましたが、今回はなんとヴィンス・ステイプルズについてです。件の『FM!』ですが、EPだと思ってたのがなんとフルアルバムだったそうです。なんととは?

タイトル『FM!』からもわかりますが、全体がラジオみたいな構成になってます。というのも、LAのラジオ「Power 106」に、「Big Boy Neighborhood」というコーナー?があるんですが、それと全く一緒です。
この動画はロジックがクソうまラップかましてて、最高です

まあともかく、『FM!』では、ラジオで流される感じで短い曲がポンポンと並んでいきつつ、途中にインタールードとしてアール・スウェットシャツのフリースタイルが流されたりします。ラジオっていう形態だからか、11曲も収録してる割に22分で終わるという、以前の記事でいったような「ストリーミング時代」の構成なのかな〜〜とか思います。

ヴィンスはカリフォルニア州ロングビーチの生まれで、カリフォルニア州でもギャングの抗争などによりかなり治安の悪い地域として知られています。ケンドリックのコンプトンみたいなところだと思ってもらえれば。新宿でいえば歌舞伎町、大阪ならミナミ、みたいな……

得てして、こういう普段から抑圧されているような人たちからいいアーティストが生まれるという傾向があると言えるでしょう。ギャングの街、ロングビーチで金を稼ぐ1番簡単な方法はギャングの一員になることですから、そのレールから外れるためには勉強するか、別の形で成功するかしかないわけですね。

そんなところから出てきたヴィンスはどうしてもロングビーチのことをラップしたいわけです。なので、一曲目の『Feels Like Summer』から「LB」のことを何回も言うんですね。

やっぱこのアルバムのメインはなんと言っても『FUN!』ですね。これPVが最高です。
グーグルアースでロングビーチについて調べてる感じなんですけどね、このアイデアがまず好きなんですけど、ロングビーチで何が起こってるかがカメラに映ってていいです。ヴィンスとその仲間で盗みに入って、そのあと捕まってたり、ラモナ・パークでPV撮ってたり。あの大勢でノッてる感じのヤツ、個人的にBobby Shmurdaの『Hot Nigga』を思い出すんですが、それを軽くイジってる感じですかね。でもそれすら「ただ楽しみたいだけなんだよ」っていうことなんですね〜〜

最後白人の男の子がそのPVを観てて、親に呼ばれた瞬間にまるで見られちゃいけないかのようにすぐパソコンを閉じてるところは、個人的な解釈だと、こういう「悪いノリ」を見て白人の子供が憧れを抱いているっていうことなのかなと思いました。それで実際白人でそういうことをラップする人はたくさんいますし…… それに対する批判として、J. Coleの『1985』があるわけなんですけど、それに対するアンサーというか。「別にただ楽しんでるだけじゃん、何が悪いの?」という態度を示しているそういうラッパー達を代弁しつつ、皮肉的にそういう方々をイジってるんだと思います。

こういった表現方法は、ウェストコーストがずっとやってきた手法でもあります。このブログを見ている皆さんはたぶん映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』はもうご覧になっていると思いますが、あ、観てない? まあそれはいいとして、N.W.A.とかはそういう実情を全国的に知らせるためにそういう曲を書いていたので、地元の人たちは「これが俺たちのリアルだ」と賛同していったわけなんですね。もちろんそのリアルさを批判する目的で曲を作ってますから。

ところがどっこい、最近のラッパーは、見た目は似ていても、含んでいるメッセージが全く別物になってしまってます。だからこそ、こういう「ザ・ヒップホップ」な表現をするヴィンスは、今となっては珍しいと言えますが、同時にその珍しさから人気を得ているのです。もちろん昔からのヒップホップファンは大好きだしね。

まあカッケーので聴いてみてください。しかもヴィンス本人はツイッターで「まだまだ出すからよろしく」とも発言してました。楽しみですね。


それはそうと、彼のファーストアルバム『Summertime ‘06』も名盤中の名盤です。『FM!』聴いてカッケーと思ったらこっちも是非。

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